Z世代の部下ができた。どう接すればいいかわからなかったので考察。
初めて部下ができる
これまでは新人はおろか主任以下があまりいないような部署で働いてきたこともあり、自分に部下が配属されるなんてことはあまり想像していなかった。しかしながら、その時は突然訪れた。
「まきお君の下に2年目の新人を1人付けるからよろしく。期待しているから。」
部長よりそういわれてしまったら頑張るしかない。とりあえず、先輩より「部下のトリセツ」という本をお借りして、何とかデキる先輩を演じなければと力を入れたのが昨年の6月。
それから、今話題のZ世代部下と二人三脚で業務を進める日々が始まる。
彼はかなり優秀で多くの人が知っている有名大学を卒業して弊社に入社してきており、キャリアについても大まかではあるがイメージを持っている。これは、教えることも少ないんじゃないか?
彼には事業対象領域の調査や顧客との調整などをやってもらうことにした。一緒に働き始めてしばらくは問題なく仕事をこなしていた。楽しそうに日々を過ごしていたように見えていた。
ところが・・・
3か月ほど経った頃より、彼に任せていた業務が急にストップした。約束した期日までに資料が出てこなかったり、連絡が途絶えることもしばしばあった。いったい彼に何があったのだろう?
対話で見えてきた3つの傾向
「最近の若い子は忍耐力がない」「何を考えているかわからない」こんな表現を使うと「でたよ、おっさんの愚痴」と思われるかもしれない。
自分が入社した当時も自分らに対してそのような声が聞こえてきたし、その時は、「自分の理解できないモノに対してレッテル貼ることしか脳のない哀れな人たち」ぐらいにしか思っていなかったのだが、自分がある程度の年次になってようやくわかった。
最近の若い子たちが分からない
「わからない」で済ませるとレッテル貼り連中の仲間入りとなってしまうので、何とか自分なりにコミュニケーションを取りながら彼とじっくりと対話してみることにした。それこそ何度も何度もである。
その中で少しずつ見えてきたのが以下の傾向である。
1)持っているビジョンは大きい。自身の理想像もある程度持っている。環境問題などの大きな課題に対する感度は非常に高い。が、今、具体的にやりたいことが何なのかについては明確でないことが多い。
2)目の前の仕事をすることが、どう理想の自分に近づくのかが見えないと先へ進めない。1歩踏み出す前にゴールへの最短距離(=答え)を知りたがる。答えが分からないと先へ進まない。
3)権利の主張をする。一方で義務の話は避ける。
この傾向から私はZ世代の背景を以下のように推察する。
Z世代と言われる人たちは 1995年~2010年頃に生まれた世代である。物心ついた頃にはITバブルが弾け、アメリカ同時多発テロによる暗い世の中。2007年にはリーマンショックが弾けとにかく将来が見えない社会の中で育ってきている。経済的にも社会的もゆとりがないことに慣れている。
その中でZ世代の人々は非常に賢く生きる術を磨いてきた。
IT機器の普及によりネットから「正解」を簡単に引き出せることを知っている。ツールの取り扱いも堪能だ。モノを買う前にはネットでレビューを見たり比較サイトで比較をしたり簡単に最安値で売っているショップを見つけることが出来る。
行動する前に事前にしっかりと調査をすれば「正解」に簡単に低コストでたどり着ける。「コスパが良い」生き方ができるのである。Z世代だけでなくミレニアム世代にもそのような傾向が見られるが、その結果として、ミニマリストなども注目されるようになってきたのだろう。
また、インターネットは、価値観も大きく広げてくれているようだ。インターネットコミュニケーションにより、普通に生きているだけでは触れないような大きな社会課題に触れる機会も増えているだろうし、逆に、知らなかったばかりに起きたトラブル事例にも造詣が深いだろう。権利を主張しないと自分の権利が脅かされるということをよく理解している。
そういう部分も含めて「コスパが良い」生き方というのが彼らの根本的な活動背景のような気がしてならない。
コスパの高い企業=魅力的な企業
このようなコスパ重視の生き方は非常に賢いと感じる。今の日本企業の仕組みがコスパ重視の彼らから見た時にあまり魅力的でないというのも頷ける。
入社した時から歯車として価値のあるかどうかが分からない仕事を延々とさせられ、もらえる給料は大して働いてもいないように見える管理職の半分程度。将来役立つスキルが付けばいいがそういう実感も湧かない。無駄な時間を使ってはした金を稼ぐだけの「コスパの悪い」仕事にしか見えない。
結局、私の部下だった彼は会社を辞めてしまい、給料の高いコンサル会社に就職してしまった。彼に最後に話を聞いた時には、「より厳しい環境で自分を成長させたい」「スキルを身に着けたい」と言っていた。彼にとっては、そのコンサル会社こそが「コスパの良い」企業であったのだろう。
この件から「若手が定着しない」と嘆く日本企業ならびに若手の部下を持つ上司は、いかに彼らの人生にとって「コスパの良い」場所であるのかということを提示してあげることが重要であることが分かる。
実際、10年も日系企業にいる私からすると、非常にコスパの良い企業であったと感じている。自己研鑽も十分できたし、会社のお金で多くの教育も受けさせてもらった。やりたい仕事をやりたいようにできたし、給料も悪くない。
ところが、残念ながらそういう旨味を部下に説明したり見せる上司は私を含めていなかった。もう少し分かりやすくコスパを若手にお見せしてあげてもいいのではないか?と感じた。
本当にこれが正しいのかは(?)であるが、次回以降、Z世代の部下を持つ際にはここら辺を意識して動機付けしていきたいと考えている。