中小企業診断士2次試験に向けた備忘録
はじめに
私は中小企業診断士を2022年に取得した。受験したのは令和3年度の試験である。
この時は令和3年の2月より1次試験の勉強を開始し、1次試験受験後より2次試験の勉強を始めたので、かなりギリギリとなってしまった。
勉強時間が実質2か月ちょっとという状態であったのでかなり効率的に勉強をせざるを得なかったが、結局合格をすることが出来たので、この時のことを当時の日記を参考にしながら備忘録として書き残しておきたいと思う。
これから受験する誰かの参考になってくれれば幸いである。
誤解してほしくないのは勉強時間が短かったからと言って偉いわけでも何でもない。資格試験なんていうのは言うなれば受かってしまえば何点だっていいのだ。
各事例の概要と参考書とポイント
2次試験の概要については、他の人の記事なども含めて皆さん解説しているので詳細は割愛しますが、簡単に言うと事例1~事例4の4つの事例を読んで設問に答えるという記述式の試験である。
事例1~事例3は経営者に対するアドバイスを求められる問題がメインとなる。
事例1は主に組織論や人的資源管理(HRM)、経営学的な側面が設問になる傾向がある。経営者がどうしてドメイン拡大をしたのか?や新しい組織を作ったのはなぜか?などが問われることが多い。1次試験でいえば企業経営理論の内容が多いような印象だ。
事例2は主にマーケティング的な側面が設問になる傾向がある。SWOT分析をしろという設問はほぼ毎年出題されているし、コミュニケーション戦略や新規開拓などの戦略を問われることも多い。こちらも1次試験でいえば企業経営理論の試験範囲がメインとなる。
事例3も事例2のようにマーケティング的側面も大きいのだが製造業としての課題を問われることが多く、1次試験でいうところの運営管理の知識が重要となる。
事例4だけはちょっと毛色が違い、財務分析をしたり投資対効果を計算したりという非常に定量的なアプローチを求められる。この事例4については主に1次試験の財務・会計の知識が必要となるが、それ以上に各種計算など事例1~3別途特殊な訓練が必要となる。
事例1~3の参考書と勉強方針
中小企業診断士の2次試験の厄介なところは、模範解答が公開されないことにある。どれだけ演習をしても答え合わせができないのだ。
そのため、受験生の再現回答を集めて「おそらくこういう採点基準だろう」というのを分析した「ふぞろいシリーズ」が必要となる。私もとりあえず、「ふぞろいな合格答案」を複数年分購入した。
個人的には2か月以上時間があるのであれば10年分ぐらいは演習ができるので、10年データブックという多年度の試験の再現答案が掲載されている書籍もおすすめである。
事例1~3の基本的な勉強法としては、とにかく解答を書きまくることである。記述内容としては100字~150字で回答をまとめる必要があるが、どの程度の要素を入れると100字の回答になるのか、ある程度感覚で分かるようになるまで続けるべきである。
例えば、100字であれば文章2文から構成させ、解答要素を3要素織り込む、140字であれば3文に分割し要素は5要素入れ込むといった具合である。
理想的には毎日1事例は実施したいところだ。私の場合は週末土日で2年分、平日は1事例分を記述&復習をすることで10年分の演習をこなした。
事例4の参考書と勉強方針
事例4については一番苦手としていた。本当に初見ではまったく解けない状況であったので、最初の1週間は毎日のように事例4にフォーカスした勉強を実施した。
参考書としては「事例Ⅳの全知識&全ノウハウ」だけを利用した。この書籍は、1)経営分析、2)損益分岐点分析、3)意思決定会計、4)セグメント別会計、5)キャッシュフロー分析、6)その他計算問題、という6章から構成されているが、この各章の問題を毎日1章ずつは必ず解くようにした。
問題によっては公式に当てはめれば自動的に解ける的な問題もあるけれども、個人的にはなぜそうなるのかを確実にキッチリ抑えたい性分なのでとにかく分からない部分は深ぼった。
試験の合格とは直接関係なかったりするかもしれないけれども、深掘れば深掘るほど理解が深くなり忘れにくくそして実務でも自分の手足のごとく使えるようになる。
事例4については実務でも非常に活用する内容なので是非とも深い理解をしていただきたいと思う。
重要なのは国語力(再現答案は信用すべからず)
先にも述べたように2次試験には模範解答がない。多くの受験生は再現回答を模範解答のように取り扱っている節があるが、個人的には非常に違和感を感じる。
例えば、「〇〇である理由を答えよ」という問題があったときに、「理由は~」から回答を開始していたり、問いに対して明らかに日本語が不自然じゃないか?といったものが散見される。
点数もある要素が入っていたら2点加点などと言った方式で記載されている。
いや、別に、ふぞろいの書籍を責めているのではない。模範解答がない試験に対するアプローチとして、合格者の答案を集めて傾向を分析し、どのような点数配分として分解していくかというプロセスを実行すればそのように記載するのがおそらくベストだ。
ただし、それを利用する側の受験生はあくまでそれは傾向でしかないということを理解しないといけない。たとえ、加点される要素を解答に織り込んでいたとしても、点数がもらえるとは限らない。
私個人としては、理解しやすい日本語かどうか、という点が実は加点比重が多いのではないか?と睨んでいる。
中小企業診断士2次試験は実務を模した試験であるということを忘れてはならない。文章を読み経営者の想いを正しく理解し、経営者の想いに寄り添った形で、かつ、経営者が理解しやすい言葉を用いて丁寧に解答するということが2次試験では重要なのである。
また、正しく文書を読めていると加点されるポイントとなりそうな要素は自ずと見えてくる。これは沢山事例を解いてみればわかるのだが、事例の文章を読むと、明らかに余計な文書がくっ付いている場合がある。
アレ?この文書蛇足じゃない?え?なんで急にこんな話しているの?
という部分があればそこは解答要素となることが多い。元の文書だと見落としそうな話をあえて文書を追加して膨らませることで解答者に対してアピールしている。そんな印象を持つ部分が与件文内で浮かび上がって見えるとしめたものだ。
意味のない勉強法と効果のあった勉強法(完全に私見)
意味のない勉強法
勉強法というのは個人個人異なって当然だと思うし、自分に合った勉強法を見つけるというのが一番重要なのであるわけので、ダメな勉強法というのはあまりないと思っている。そう思いたい。
ただ、中小企業診断士の試験勉強をしている人たちとこれまでいろいろコミュニケーションをとる中で、これはあまり効率的でないな・・・と思うものがいくつかあったので、完全に私見であるがご紹介したい。
① ふぞろい解答を書き写す
大学受験でもそうなのだが基本的に解答を書き写すというのはあまり意味がない。ある事例のある設問の解答を見て理解することは重要であるが、理解できたなと思ったら再度解答を隠して自分の力だけで回答するようにしたい。このプロセスは何回やってもOKだ。
② 文書要約トレーニング
100字の記述慣れ対策として既存の文書(新聞などの記事)を要約するトレーニングをしている人がいる。確かに新聞記事の要約トレーニングは文書力を上げるのに一定の効果がある。かくいう私も高校生時代に天声人語の要約をやっていたりする。ただし、このトレーニングは添削してくれる人がいて初めて成立する。ある程度の国語力がある人であれば記述後に改めて自分で添削することができるのであるが、そうでない人がただ闇雲に要約トレーニングをしてもあまり意味がない。それであれば、事例を何度も何度も自分の力で回答する方が100倍有効である。
③マーカー多用
2次試験会場では結構多くの人たちがカラーマーカーを使って問題文にマークをいれているが個人的にはあまりお勧めしない。
なぜなら・・・マーカーを使った回答にはトレーニングが必要となるからである。何色のマーカーを何と定義して、それを体に覚えこませるのに時間がかかる。1年以上準備期間があるのであればいざ知らず、半年以下であったり、ましてや1次試験が終わってからの2か月ちょいといった準備期間であれば、マーカー回答に慣れるのに無駄な時間を費やすこととなる。
また、個人的にはツールが多くなればなるほどエラーや混乱が生じやすくなると思うし、万が一マーカーを忘れるなど想定外の事象が起きた場合のリカバリーも、必要とする道具が少なければ少ないほど良い。
個人的にはシャープペンと消しゴムと電卓で十分であると思う。
要素の書き漏らしがあったらどうするのか?などと言う人もいるだろうが、多少細かい話を書き漏らしたところで大きな減点にはならないだろう。
効果のあった勉強法
① とにかく書いて書いて書きまくる法
必ず1日1問以上可能であれば1事例を記述する。記述する際に方眼紙にガンガン記述するのが良いが、私はこのような100字のマス目を沢山印刷してそれに記述するようにしていた。
ただし、各事例ともいきなり記述するのは得策ではない。実際の試験でいきなりエイヤで書き始めることはほとんどないのでまずは余白に記載したい要素を羅列し、文書を構成してから記述する練習をすると良いだろう。
このトレーニングを積んでいくと、あるタイミングから、エイヤでいきなり方眼紙を埋めてもある程度解答できるようになってくる。そうなってくると仕上がりは近い。
実際の試験でいきなり方眼紙に書くことはあまりないが・・・自分の場合は本番の事例1の前半の問題で結構時間ロスをしてしまい、最後の方はどの問題もエイヤ解答をしてしまったが十分に合格点をいただけた。
② 声に出して解答をしてみる法
意外と効果があったなという勉強法がこれ。事例を読んで記述を回答する前に、目の前に経営者がいることを想像しながら声に出して回答してみる。記述トレーニングをし過ぎて指が痛くなった際に仕方なくやり始めたトレーニングではあるが、これをやると記憶が非常に綺麗に整理されることに気が付いた。
このトレーニングを開始するまでは、記述の書き出しがちょっとまごつくことがあったのだが、トレーニングを開始してからというもの、スムーズに記述ができるようになった。変に要約トレーニングするよりはずっと良さそうである。
③ 友人とディスカッション
個人的に良かったのがコレ。たまに、一緒に診断士試験の勉強をしている同僚と議論。事前に同じ年度の同じ事例を回答したうえで集合。この事例の3代目はどうだの、どうすべきだったか?だの、たまに飲みながら議論を交わしたり。
試験勉強を一人でやっているとストレスが溜まったりするわけだけど、こういう友人とディスカッションできると、気分転換にもなるし、何より非常に記憶に残る。
まとめ
以上、2次試験に向けて私が実践した勉強と注意点について記載した。
ここに記載したのはあくまで私見であり、私個人として効果的であったものを記載している。
冒頭にも述べたが、中小企業診断士試験に限らず、資格試験や勉強というものは、他人のやり方を真似してもうまくいかない。
コツコツ何年もかけてやる人に向いている勉強法もあれば、3日ボウズに近い人に向いている勉強法もある。
試行錯誤しながら、ある時は他人のやり方をやってみたり、ある時は自分のポリシーを捨ててみたり、そういうトライアンドエラーこそが勉強力に繋がるものであると、私は信じている。